犬のカーミングシグナル完全ガイド！愛犬のストレスサインを見抜く方法

しぐさ

遊び方・トレーニング

愛犬が突然体をブルブルっと振る、鼻をペロっと舐める、あるいは飼い主さんのことをチラッと見て目をそらす…。これらは単なる犬の癖だと思っていませんか？実は、これらは愛犬が私たちに送っている大切なメッセージ、「カーミングシグナル」かもしれません。

カーミングシグナルとは、犬が自分自身や相手を落ち着かせようとするときに使う、非言語的なボディランゲージのこと。人間で言えば、緊張した時に深呼吸をしたり、相手に「落ち着いて」と手で示したりするようなものです。愛犬がこれらのサインを出している時、多くの場合、何らかのストレスや不安、緊張を感じているサインなのです。

愛犬のカーミングシグナルを理解することは、彼らの心の声を聞くことと同じです。これらのサインを見逃さずに適切に対応することで、愛犬のストレスを軽減し、問題行動を未然に防ぎ、そして何よりも飼い主さんとの信頼関係を一層深めることができます。今回は、愛犬が送る代表的なカーミングシグナルとその意味、そしてそれらを見抜くための方法を、プロの視点から詳しく解説します。今日から愛犬の「隠された言葉」を理解し、心を通わせるコミュニケーションを始めていきましょう！

カーミングシグナルとは？なぜ犬はこれを使うの？

カーミングシグナルは、ノルウェーの犬行動学者、トゥーリッド・ルーガスによって提唱された概念です。犬は本来、争いを好まず、群れの中での調和を大切にする動物です。そのため、緊張やストレスを感じた時、あるいは相手（人間や他の犬）に「落ち着いてほしい」「敵意はありません」と伝えたい時に、これらのシグナルを発します。

主な目的は以下の通りです。

自分を落ち着かせる: ストレスや不安を感じた時に、自分自身の興奮を鎮める。
相手を落ち着かせる: 興奮している相手や、威圧的な相手に対し、「敵意はありません」「落ち着いてください」と伝える。
争いを避ける: 潜在的な衝突を回避し、平和な関係を保つ。

これらのサインを理解することで、私たちは愛犬がどんな状況でストレスを感じているのか、あるいは他の犬とどうコミュニケーションを取っているのかを深く理解できるようになります。

愛犬が発する代表的なカーミングシグナルとその意味

犬が使うカーミングシグナルは非常に多様ですが、ここでは日常生活でよく見られる代表的なサインをご紹介します。

1. あくび

意味: ストレス、不安、混乱、退屈、または眠気。
見抜くポイント: 眠いわけでもないのに、普段と違うタイミングであくびをしていたら注意が必要です。例えば、叱られている時や、知らない場所に来た時など。

2. 舌なめずり（鼻や口元をペロペロ舐める）

意味: 緊張、不安、ストレス、何かを考えたり、困惑したりしている。
見抜くポイント: 食事や水が関係ないタイミングで、しきりに鼻や口元を舐めていたら、何らかのストレスを感じている可能性があります。

3. 首を振る、体をブルブルっと振る（体全体を振る）

意味: ストレスや緊張の解放、気持ちの切り替え。
見抜くポイント: 水に濡れていないのに体をブルブルっと振る場合、それは「嫌なことが終わった」「緊張が解けた」といった気持ちの切り替えのサインです。動物病院の診察後や、叱られた後などによく見られます。

4. 目をそらす、目を細める、まばたきを多くする

意味: 緊張、服従、敵意がないことの表明、不安。
見抜くポイント: 飼い主や他の犬、見慣れない物などから視線をそらすのは、「私はあなたに敵意はありません」「私を脅かさないで」というサインです。また、不安を感じている時にまばたきが増えることもあります。

5. 鼻を鳴らす、口を閉じる

意味: ストレス、不快。
見抜くポイント: 特に口角が引き締まって、口をきゅっと閉じている場合は、緊張やストレスを感じている可能性が高いです。

6. 匂いを嗅ぐ（地面や空気を嗅ぐ）

意味: ストレス、混乱、相手を落ち着かせたい、情報収集、または無視したい。
見抜くポイント: 何か嫌な状況に遭遇した時、急に地面の匂いを嗅ぎ始めたり、空気をスーッと吸い込んだりするのは、ストレスを感じて冷静さを取り戻そうとしているサインかもしれません。

7. ゆっくり動く、固まる（フリーズ）

意味: 不安、警戒、緊張、または降参。
見抜くポイント: 普段は活発なのに、特定の場所や状況で動きがゆっくりになったり、その場に固まったりする場合は、強いストレスを感じている可能性があります。

8. 離れる、背を向ける、体を斜めにする

意味: 距離を取りたい、争いを避けたい、友好的な意図。
見抜くポイント: 相手に直接向かわず、体を斜めにして近づいたり、背を向けたりするのは、威嚇ではないことを示し、友好的な意図を表すサインです。また、嫌なことから逃れたい時にも使われます。

9. 前足を上げる、お辞儀をする（プレイバウとは異なる）

意味: 緊張、不安、何かを求めている。
見抜くポイント: 遊びの誘い（プレイバウ）とは異なり、体が硬直していたり、目をそらしていたりする場合、不安を感じているサインかもしれません。

愛犬のサインを見抜くための実践ヒント

全体像で判断する: 単一のシグナルだけでなく、愛犬の耳、目、尻尾、体の姿勢など、全身の動きを総合的に見て判断しましょう。また、その時の状況（他の犬がいるか、大きな音がしているかなど）も考慮に入れることが重要です。
普段の行動を把握する: 愛犬がリラックスしている時や、楽しい時にどのような行動をするかを把握しておくことで、ストレスサインとの違いが明確になります。
早めに介入する: カーミングシグナルに気づいたら、問題が大きくなる前に対応しましょう。例えば、ストレスを感じているようであれば、その場から離れる、抱き上げて安心させる、安心できる場所へ移動するなど、原因となっている刺激から遠ざけてあげます。
愛犬のペースを尊重する: 新しい場所や犬に慣れさせたい時も、無理強いはせず、愛犬が示すカーミングシグナルを尊重し、時間をかけてゆっくりと慣らしていきましょう。