公開日：2025年6月8日

犬が「壁や床をカリカリ」する原因と対策！破壊行動はストレスのSOSサインかも

遊び方・トレーニング

愛犬が突然、壁や床、あるいは家具などを執拗に引っ掻き始める…そんな経験はありませんか？飼い主さんにとっては困った「破壊行動」に見えるかもしれませんが、実はこのカリカリというしぐさは、愛犬からの大切なSOSサインである可能性が高いです。単なる「いたずら」として片付けてしまう前に、その行動の背景にある愛犬の心理や原因を理解することが、問題解決への第一歩となります。

この記事では、犬が壁や床をカリカリする様々な原因を深掘りし、それぞれの原因に応じた具体的な対策と、愛犬が安心して過ごせる環境を整えるためのヒントを詳しく解説します。今日から愛犬のカリカリ行動に隠されたメッセージを読み解き、ストレスを軽減して、より穏やかな毎日を送れるようサポートしてあげましょう。

犬が壁や床をカリカリする主な原因と隠された心理

犬が壁や床をカリカリする行動は、単一の原因で起こるわけではありません。多くの場合、複数の要因が絡み合っており、その背景には愛犬の心身の状態が深く関係しています。

1. 退屈と有り余るエネルギー最も一般的な原因の一つが、運動不足や精神的な刺激の不足による「退屈」です。特に、身体能力が高く、多くの運動量を必要とする犬種や、知的好奇心が旺盛な犬が、十分な刺激を得られない環境にいると、有り余るエネルギーを発散するために破壊的な行動に出ることがあります。
- 運動不足: 散歩の時間が短い、運動の強度が足りない、室内での遊びが少ないなどの場合、エネルギーが蓄積され、壁や床を掘ることで発散しようとします。
- 精神的な刺激不足: 嗅覚を使う遊びや、知育トイなど、頭を使う機会が少ないと、退屈しのぎに家具などを噛んだり引っ掻いたりすることがあります。
- 注目を引くため: 飼い主さんが忙しい時や、構ってくれない時に、わざとカリカリと音を立てて、飼い主さんの注意を引こうとすることもあります。これは、過去にその行動で注目された経験がある場合に強化されやすいです。
2. ストレスと不安愛犬が感じているストレスや不安が、壁や床をカリカリする行動として現れることも少なくありません。これは、不安な感情を発散したり、安心感を求めて行動したりする自己鎮静行動の一つです。
- 分離不安: 飼い主さんと離れることへの強い不安を感じる犬は、お留守番中に壁やドア、床などを引っ掻いたり噛んだりすることがあります。これは、飼い主さんを探そうとする、あるいはパニック状態になっているサインです。
- 環境の変化: 引っ越し、家族構成の変化（新しいペットや赤ちゃん）、生活リズムの変化など、環境の大きな変化は犬にとってストレスとなり、そのストレスを発散するためにカリカリ行動に走ることがあります。
- 騒音や刺激への反応: 外からの騒音（工事の音、雷、花火など）や、窓の外を通り過ぎる人や動物への過剰な反応として、興奮や不安から壁や床をカリカリする場合があります。
3. 本能的な掘削行動犬は元々、巣穴を掘ったり、獲物を埋めたりする「掘削」という本能的な行動を持っています。この本能が、現代の生活環境の中で壁や床を掘るという形で現れることがあります。
- 寝床作り: 快適な寝床を作るために、床やベッドをカリカリと掻くことがあります。これは、寝る前に土を掘って寝心地を良くする野生の本能が残っているためです。
- 食べ物や物を隠す: 以前にも触れましたが、食べ物やお気に入りの物を隠す場所として、地面を掘る本能が壁や床に向かうことがあります。
- 探求心: 壁の隙間や床のカーペットの裏に何があるのか、と好奇心から掘り進めることもあります。
4. 健康上の問題稀ではありますが、特定の健康上の問題がカリカリ行動の原因となっていることもあります。皮膚のかゆみ、関節の痛み、あるいは神経系の問題などが背景にある可能性も否定できません。
- 皮膚の痒み: 足や体に痒みがある場合、それを紛らわせるために壁や床を引っ掻くことがあります。
- 関節の痛み: 特定の体勢が楽になるように、床を掘って体を落ち着かせようとすることがあります。
- 強迫性障害: 精神的なストレスが極度に高まると、特定の行動（足舐め、尻尾追い、そして掘削行動）を強迫的に繰り返すようになることがあります。

愛犬のカリカリ行動を止めるための具体的な対策

愛犬のカリカリ行動を改善するためには、原因に応じた適切なアプローチが必要です。感情的に叱るだけでは逆効果になることが多いため、冷静に、そして根気強く対応しましょう。

1. 身体的・精神的な欲求を満たすエネルギー不足や退屈が原因であれば、その欲求を満たすことが最も重要です。
- 十分な運動量の確保: 毎日の散歩時間を増やしたり、ドッグランなどで思い切り走らせたりして、十分な運動量を確保しましょう。単に歩くだけでなく、ボール遊びや引っ張りっこなど、愛犬が心から楽しめる活動を取り入れるのが効果的です。
- 知的な刺激の提供: 知育トイやノーズワーク（嗅覚を使った探し物ゲーム）を取り入れ、愛犬の頭を使わせる機会を増やしましょう。新しい芸を教えるトレーニングも、精神的な満足感を与え、退屈を解消するのに役立ちます。
- 退屈させない工夫: 飼い主さんが忙しい時間帯には、長時間楽しめる噛むおもちゃ（コングなど）を与えたり、安全な場所で自由に過ごせるようにしたりする工夫も有効です。
2. ストレスと不安の軽減ストレスや不安が原因の場合は、その根本的な原因を取り除くことが重要です。
- 安心できる環境作り: 愛犬が落ち着けるハウスやケージを用意し、そこが安全な場所であることを教えてあげましょう。お留守番の際は、飼い主さんの匂いがついたブランケットを置いてあげたり、安心できる音楽を流したりするのも良いでしょう。
- 分離不安への対応: 分離不安が疑われる場合は、留守番の時間を徐々に伸ばす「段階的な慣らし」や、出かける前のルーティンを見直すなどのトレーニングが必要です。場合によっては、動物行動の専門家（獣医行動学者や行動カウンセラーなど）のサポートも検討しましょう。
- 外部刺激からの保護: 窓の外の通行人や騒音に反応してカリカリする場合は、カーテンを閉める、愛犬が外を見られない配置にする、あるいは環境音で外の音をマスキングするなどの対策が有効です。
3. 本能的な掘削行動の代替掘る本能を満たしてあげるための代替案を用意することで、壁や床へのダメージを防ぎます。
- 専用の掘る場所を用意: 庭があれば砂場を作ってあげたり、室内であれば安全な布や毛布を何枚か重ねて掘る場所を提供したりしましょう。そこを掘ることを許し、そこで掘ったら褒めることで、満足感を満たしてあげます。
- 掘っても良いおもちゃ: 噛んで中からおやつが出てくるタイプのおもちゃや、中にフードを隠せるパズルタイプのおもちゃも、掘る本能を満たすのに役立ちます。
4. 行動を「無視」し、正しい行動を「褒める」もし愛犬がカリカリ行動で飼い主さんの注意を引こうとしている場合は、その行動を徹底的に無視することが有効です。カリカリし始めたら、目を合わせず、声をかけず、その場を離れるなどして反応しないようにします。そして、カリカリを止め、落ち着いた瞬間に褒めてご褒美を与えましょう。これにより、「カリカリしても何も起きない」「落ち着いていると良いことがある」と学習させることができます。
5. 環境整備と予防策問題行動を未然に防ぐための環境整備も重要です。
- カリカリされる場所の保護: 壁や柱の角、床の特定の場所などがよくカリカリされるのであれば、ペット用の保護シートやガードを取り付けるなどして物理的に保護しましょう。
- 犬に安全な室内環境: いたずらをさせたくない大切なものや、危険なものは愛犬が届かない場所にしまうようにしましょう。