愛犬が「噛む」のはなぜ？家具・スリッパ破壊を防ぐ正しい対策と歯固め以外の理由
愛犬が家の中で家具の脚をガリガリ噛んだり、大切なスリッパやリモコンをボロボロにしたり…。「またやられた！」と頭を抱える飼い主さんは少なくないでしょう。特に子犬の頃は歯の生え変わりで物を噛むことが多く、ある程度は仕方ないと思われがちです。しかし、成長した犬が物を破壊する行動を続ける場合、それは単なる「歯固め」や「いたずら」だけではない、より深い理由が隠されている可能性があります。
この「噛む」「破壊する」という行動は、愛犬の心や体に何らかのサインが隠されていることが多いものです。この記事では、愛犬が物を噛む行動の背景にある様々な原因を、歯の成長期以外の理由も含めて深く掘り下げて解説します。そして、それぞれの原因に応じた効果的な対策と、愛犬の欲求を満たしながら破壊行動を防ぐための具体的な方法をご紹介します。愛犬と飼い主さんがストレスなく、安心して暮らせる環境を築くために、今日からできることを実践していきましょう。
愛犬が家具やスリッパを「噛む・破壊する」主な原因
愛犬が物を噛む行動には、飼い主さんが気づきにくい様々な理由が潜んでいます。その原因を正しく理解することが、適切な対策を講じる第一歩です。
歯の成長と口腔内の不快感
最も広く知られている原因ですが、子犬期以外にも注意が必要です。
乳歯から永久歯への生え変わり（子犬期）
生後3ヶ月から7ヶ月頃にかけて、子犬は乳歯が抜け落ちて永久歯に生え変わります。この時期は歯茎がむずがゆく、その不快感を和らげるために物を噛むことが多くなります。これは本能的な行動であり、この時期に適切な噛むおもちゃを与えないと、家具や人の手足を噛む癖がつきやすくなります。
歯の痛みや歯周病（成犬・老犬）
成犬や老犬でも、歯に痛みがある場合や、歯周病で歯茎が炎症を起こしている場合に、その不快感から特定の物を噛むことで気を紛らわせようとすることがあります。デンタルケアが不足している犬に多く見られる症状です。
退屈とエネルギーの有り余り
犬は本来、活動的な動物です。十分な運動や精神的な刺激がないと、有り余るエネルギーを発散するために物を噛む行動に出やすいです。
運動不足によるストレス発散
散歩の時間が短い、運動量が足りないなど、身体的なエネルギーを発散しきれていない場合、破壊行動を通じてストレスを解消しようとします。
精神的な刺激不足（退屈）が引き起こす破壊行動
知育トイや脳を使う遊びの機会が少ないと、退屈しのぎに家具や物を噛んでしまいます。特に留守番中など、飼い主がいない時間は退屈になりやすいです。
適切な噛むおもちゃの不足
愛犬にとって魅力的で安全な噛むおもちゃが十分にない場合、代わりに飼い主さんのスリッパや家具を標的としてしまいます。
ストレスと不安
環境の変化や不安感からくるストレスが、物を噛む行動として現れることがあります。
分離不安による破壊行動
飼い主と離れることに対して強い不安を感じる「分離不安」の犬は、留守番中にストレスを解消するために、家具やドア枠などを破壊することがあります。これは、破壊行動を通じて飼い主へのメッセージを送っている、あるいは不安な気持ちを紛らわせているサインです。
環境変化による不安の現れ
引っ越し、家族構成の変化、来客など、愛犬にとって大きな環境変化があった際に、不安や緊張から物を噛む行動が増えることがあります。
騒音や刺激に対するストレス反応
外の騒音や、慣れない刺激（工事の音、雷など）に過剰に反応し、そのストレスを噛むことで発散しようとすることもあります。
注目や要求のアピール
飼い主の反応を学習し、注目を集めるための手段として噛む行動を繰り返すことがあります。
「構ってほしい！」という注目要求
物を噛んだり破壊したりすることで、飼い主さんが「やめて！」と声をかけたり、追いかけたり、注目してくれた経験があると、それが「構ってもらえた」と学習し、同じ行動を繰り返すようになります。
「〇〇が欲しい！」という要求表現
散歩に行きたい、ご飯が欲しい、遊びたいといった要求を満たすために、物を噛むことで飼い主の注意を引こうとすることがあります。
本能的な行動
犬は本来、獲物を捕らえたり、肉を噛み砕いたりする動物です。その本能的な欲求が、物を噛む行動として現れることがあります。
探求行動の一環としての噛みつき
子犬は特に、好奇心旺盛で、口を使って周りの物を探索しようとします。これは世界を学ぶための自然な行動です。
破壊欲求の現れ
特定の犬種（例えば、テリア種など）は、噛んで破壊すること自体に喜びを感じる傾向がある場合があります。
家具・スリッパ破壊を防ぐ正しい対策と具体的な方法
愛犬の破壊行動を止めるためには、原因に応じた対策を組み合わせ、一貫して実践することが重要です。決して感情的に叱ったり、体罰を与えたりしないようにしましょう。
環境を徹底的に整備する
愛犬が噛んでほしくないものを排除し、代わりに噛んで良いものを用意します。
危険な物を愛犬の届かない場所に片付ける
電気コード、リモコン、靴、スリッパ、子どものおもちゃ、観葉植物など、愛犬に噛まれたくない物や危険な物は、必ず愛犬の届かない場所に片付けましょう。ゴミ箱も蓋つきにするなど、いたずらされないように工夫します。
噛んで良いものを豊富に与える
愛犬が夢中になって噛める、安全で丈夫な噛むおもちゃを複数用意しましょう。硬さや素材、形状の異なるものをいくつか用意し、飽きさせないようにローテーションで与えるのがおすすめです。コングなどの中にフードを詰めて与える知育玩具も非常に効果的です。
噛みつき防止スプレーの活用
家具の脚や壁など、どうしても片付けられない場所に、犬が嫌がる匂いのする噛みつき防止スプレー（市販品）を塗布するのも一つの方法です。ただし、スプレーだけでは根本的な解決にはなりません。
十分な運動と精神的な刺激を与える
有り余るエネルギーや退屈が原因の場合は、活動量を増やすことが重要です。
毎日の散歩を充実させる
愛犬の犬種、年齢、体力に合わせた十分な量の散歩を毎日行いましょう。ただ歩くだけでなく、匂いを嗅がせたり、公園で軽く走らせたりと、心身ともに満足できる内容にすることが大切ですす。
知育トイを積極的に活用する
コングやその他のおやつを隠せる知育玩具は、愛犬の脳を刺激し、退屈を紛らわせるのに非常に効果的です。特に留守番中に与えることで、破壊行動を減らすことができます。
飼い主との遊びの時間を増やす
室内での引っ張りっこやボール遊び、かくれんぼなど、飼い主さんと一緒に遊ぶ時間を意識的に作りましょう。これにより、愛犬の欲求が満たされ、ストレスが軽減されます。
ストレスや不安の解消
分離不安や環境変化によるストレスが原因の場合は、その根本的な解消を目指します。
安心できる居場所を作る
ケージやクレートを、愛犬が安心できる「自分だけの場所」として認識させましょう。快適なベッドや好きなおもちゃを置き、無理なく過ごせる環境を整えます。
分離不安のトレーニングを行う
飼い主の外出に段階的に慣らすトレーニング（数分から始め、徐々に時間を延ばす）、出かける前のルーティンを見直す、帰宅時に興奮させすぎないなどの対策を実践します。
ストレスの原因を特定し、取り除く
環境変化や騒音など、愛犬がストレスを感じる原因を特定し、可能な限り取り除くか、慣れさせる工夫をします。
噛む行動への正しい対応
愛犬が物を噛んでしまった時、噛みそうになった時の具体的な対応です。
噛んでほしくない物を噛んだ場合の対処法
決して感情的に叱らないこと。愛犬が噛んでほしくない物を噛んでいるのを見つけたら、まず「ダメ」「やめて」と短く低い声で伝え、すぐにその物を取り上げます。そして、すぐに安全で噛んで良いおもちゃを与え、そちらを噛んだら「いい子だね！」と盛大に褒めましょう。これにより、「これはダメだけど、こっちは良い」という区別を教えます。
噛んで良いものを積極的に与える
愛犬が物を噛みたがっているサイン（むずむずしている、口元を気にしているなど）が見られたら、危険な物を噛む前に、すぐに噛んで良いおもちゃを差し出してあげましょう。
注目を引くための行動は無視する
もし愛犬が、飼い主の注目を引くために物を噛んでいる場合、噛んでいる時に過剰に反応すると、犬は「噛むと構ってもらえる」と学習してしまいます。見ている前で噛んでいる場合は、低い声で「ダメ」と伝え、その後は無視を徹底し、噛むのをやめて落ち着いたら褒めるという対応を試しましょう。
まとめ
愛犬の噛む欲求を正しく満たす
愛犬が家具やスリッパを破壊する行動は、歯の成長期だけでなく、退屈、ストレス、不安、そして注目を引くための要求など、様々な要因が複雑に絡み合って起こります。この行動を改善するためには、愛犬の心理を理解し、原因に応じた適切な対策と、一貫したトレーニングを根気強く続けることが大切です。
愛犬の噛む欲求を正しく満たすためのポイントは以下の通りです。
- 物を噛む原因は、歯の不快感、運動不足、ストレス、注目要求、本能など多岐にわたります。
- 危険な物を片付け、安全で魅力的な噛むおもちゃを豊富に与える環境整備が必須です。
- 十分な運動と知育トイで、心身のエネルギーを発散させます。
- 分離不安などのストレス要因を特定し、解消に努めます。
- 噛んでほしくない物を噛んだらすぐに制止し、代わりに噛んで良いものを与えて褒めます。
- 感情的に叱らず、冷静かつ一貫した対応を心がけます。
愛犬の「噛む」という本能的な欲求を否定するのではなく、正しく満たしてあげることで、愛犬は心身ともに健やかに成長し、飼い主さんも安心して快適な共同生活を送れるようになるでしょう。今日から愛犬の噛む行動のサインを読み解き、適切なケアを実践していきましょう。
