公開日:
愛犬の夜鳴きはなぜ起こる?高齢犬の夜間行動と安眠のための対策
行動・気持ち

夜中に響く愛犬の鳴き声に、心配や戸惑いを感じた経験はありませんか?特に、これまで夜鳴きをしなかった愛犬が高齢になってから夜間に吠え始める「夜鳴き」は、飼い主さんの心労だけでなく、近隣への影響も考慮しなければならない深刻な問題です。高齢犬の夜鳴きは、単なるわがままではなく、体の痛み、視覚・聴覚の衰え、そして認知機能の低下など、様々な原因が複雑に絡み合って発生することがほとんどです。ここでは、高齢犬の夜鳴きの背景にある犬の心理と身体的変化を深く掘り下げ、愛犬が安心して夜を過ごせるようにするための具体的なケアと環境づくりのヒントを解説します。
高齢犬の夜鳴きが起こる主な原因!隠された心身のSOSを見抜く
高齢犬の夜鳴きは、加齢に伴う様々な変化が原因で引き起こされます。まずは、そのサインを正しく読み取ることが重要です。
- 認知症(認知機能不全症候群)の影響: 高齢犬の夜鳴きの最も一般的な原因の一つが、人間でいう認知症と似た状態である「認知機能不全症候群」です。夜間に見られる症状としては、
- 見当識障害: 自分がどこにいるか分からなくなり、不安から鳴き続ける。部屋の隅で動けなくなったり、壁に頭を押し付けたりすることもあります。
- 睡眠・覚醒リズムの逆転: 昼間は寝てばかりいるのに、夜間に活動的になり、徘徊したり鳴き続けたりします。
- 不安感の増大: 暗闇や孤独感に強い不安を感じ、飼い主を呼ぶように鳴き続けます。
- 身体的な痛みや不快感: 加齢に伴い、関節炎、腰痛、内臓疾患など、様々な身体的な痛みを抱える高齢犬は少なくありません。夜間、体が冷えたり、姿勢を変えたりする際に痛みが強くなり、その不快感や痛みを訴えるために鳴くことがあります。また、消化器系の不調や頻尿なども夜鳴きの原因となることがあります。愛犬が体を触られるのを嫌がったり、歩き方がおかしくなったりしていないか、注意深く観察しましょう。
- 視覚・聴覚の衰えによる不安: 視力や聴力が低下すると、愛犬は周囲の状況を把握しにくくなり、不安を感じやすくなります。特に夜間は、暗闇の中でさらに五感が鈍るため、孤独感や恐怖心から鳴き続けることがあります。飼い主の姿が見えなくなったり、声が聞こえにくくなったりすることで、分離不安のような症状を呈することもあります。
- 要求や分離不安の悪化: 高齢犬になっても、飼い主の愛情や関心を求める気持ちは変わりません。しかし、体が不自由になったり、寂しさを感じやすくなったりすることで、飼い主を呼ぶための夜鳴きが増えることがあります。また、分離不安の傾向があった犬は、高齢になって症状が悪化することもあります。
- 排泄の失敗による不安: 膀胱機能の低下や認知症の影響で、夜間にトイレの失敗が増えることがあります。排泄してしまったことへの不安や、汚れた状態での不快感から鳴き続けることもあります。
高齢犬の夜鳴き対策!安眠のための具体的なケアと環境づくり
愛犬の夜鳴きの原因を特定し、それに応じた対策を講じることが重要です。焦らず、根気強く愛犬に寄り添いましょう。
- 日中の活動量を調整し、生活リズムを整える: 昼夜逆転している場合は、日中に適度な活動量を確保することが重要です。散歩に行ける犬であれば、日中に日光を浴びながら散歩させ、体を動かす時間を作りましょう。寝たきりの犬でも、体を動かしたり、優しくマッサージをしたりすることで、昼間の活動を促すことができます。これにより、夜にぐっすり眠れるリズムを取り戻す助けになります。
- 睡眠環境の快適化: 愛犬が安心して眠れる環境を整えましょう。
- 寝床の工夫: 低反発マットや、体を支えるクッションなど、愛犬の体に負担がかからない、快適な寝床を用意しましょう。冬場は保温、夏場は涼しさを保つ工夫が必要です。
- 安心できる空間: ケージやサークルの中に毛布をかけたり、お気に入りのタオルを入れてあげたりして、暗くて落ち着ける「巣穴」のような空間を作ってあげましょう。
- 就寝前のルーティン: 寝る前にトイレを済ませ、静かな環境で優しく撫でてあげるなど、安眠を促すルーティンを確立すると良いでしょう。
- 痛みや不快感への対処: 身体的な痛みや不快感が原因の場合は、かかりつけの動物病院で診察を受け、適切な治療や投薬を検討しましょう。痛み止めや、関節の健康をサポートするサプリメントなどが役立つこともあります。体位変換が難しい場合は、定期的に体の向きを変えてあげることも大切です。
- 認知症ケアの導入: 認知症が疑われる場合は、かかりつけの動物病院で相談し、症状の進行を遅らせるための療法食やサプリメント、行動療法などを検討しましょう。夜間の不安軽減のために、寝室の近くに愛犬の寝床を移したり、ほんのり常夜灯をつけたりするのも有効です。
- 分離不安への対応: 飼い主の姿が見えないことへの不安から鳴く場合は、完全に別室で寝かせず、飼い主の気配を感じられる場所に寝床を移動することも有効です。寝る前にたっぷりスキンシップを取って安心感を与え、過剰な要求には応じすぎないバランスも大切です。
- 排泄管理の見直し: 夜間の排泄失敗による不安や不快感には、夜間用の吸収力の高いペットシーツを使ったり、マナーウェアを着用させたりする対策が有効です。寝る前に必ず排泄を済ませる習慣をつけることも重要です。
まとめ
高齢犬の夜鳴きと向き合い、穏やかな夜を取り戻すために
高齢犬の夜鳴きは、飼い主さんにとって心身ともに大きな負担となり得ます。しかし、その背景には、加齢による身体的・精神的な変化、特に認知症が深く関わっていることが多いものです。愛犬の夜鳴きの原因を正しく理解し、日中の活動量の調整、快適な睡眠環境の整備、そして身体的な痛みや認知症への適切なケアを行うことで、愛犬は夜を安心して過ごせるようになります。焦らず、愛犬のペースに寄り添い、根気強く愛情を注ぐことが何よりも大切です。愛犬の穏やかな夜を取り戻し、飼い主さんも安心して眠れる日々を再び手に入れましょう。