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愛犬が物を舐め続けるのはなぜ?執着行動とストレスケアのポイント
行動・気持ち

「うちの犬、いつも同じ場所の床を舐めているんです」「ぬいぐるみをずっと舐め回して離しません」「自分の体を執拗に舐め続けていて、毛が薄くなってきた…」このような愛犬の「舐め続ける」行動に、心配や疑問を感じたことはありませんか?犬が物を舐める行動は、愛情表現や探求心からくる自然なものもありますが、過度な場合や特定の物に執着して舐め続ける場合は、ストレス、不安、退屈、あるいは身体的な不調のサインである可能性があります。ここでは、愛犬が物を舐め続ける執着行動の背景にある犬の心理と、具体的な対策、そして心身のケア方法を深く掘り下げてご紹介します。
愛犬が物を舐め続ける理由!隠された心理と体のサイン
愛犬が特定の物を執拗に舐める行動には、単なる癖だけでなく、犬の心や体からのSOSが隠されていることがあります。その理由を理解することが、適切な対処への第一歩です。
- ストレスや不安の解消行動: 犬はストレスや不安を感じた時に、自分自身を落ち着かせるための「転位行動(カーミングシグナル)」として、体を舐めたり、物を舐めたりすることがあります。これは、人間が緊張した時に爪を噛んだりするのに似ています。
- 具体的なストレス要因: 留守番の時間が長い、家族構成の変化(赤ちゃんや他のペットの増加)、引っ越し、大きな音(雷、花火、工事)、運動不足、飼い主とのコミュニケーション不足、しつけの厳しさなどが挙げられます。
- 行動の現れ方: ストレスを感じるたびに特定の場所(床、カーペットの角、壁など)を執拗に舐め続けたり、お気に入りの毛布やおもちゃを四六時中舐めて離さなかったりする様子が見られます。
- 退屈やエネルギーの余剰: 十分な運動や精神的な刺激が得られていない犬は、有り余るエネルギーや退屈から、物を舐める行動に走ることがあります。これは、エネルギーを消費したり、何かをすることで時間を潰したりする代替行動の一種です。特に、留守番中にこうした行動が見られる場合は、退屈が原因である可能性が高いです。
- 分離不安のサイン: 飼い主との分離に強い不安を感じる「分離不安」の犬は、飼い主がいない間や、外出を察知した時に、ストレス行動として物を舐め続けることがあります。これは、飼い主の匂いがついた物(服、布団など)に対して特に見られる傾向があります。
- 探求心や好奇心: 子犬や好奇心旺盛な犬の場合、新しい物や匂いに対して、口を使って探求する行動として舐めることがあります。これはある程度自然な行動ですが、誤飲に繋がらないよう注意が必要です。
- 身体的な不調や痛み: 稀に、皮膚炎やアレルギーによる痒み、関節の痛み、消化器系の不調など、身体的な原因から特定の場所を舐め続けることがあります。例えば、お腹が痛い時に特定の床を舐め続けたり、痒みのある皮膚を執拗に舐めてしまうなどです。もし、舐める場所が限定されていて、その部位に炎症や脱毛が見られる場合は、身体的な原因を疑いましょう。
- 過去の経験による習慣化: 過去に何らかの理由で舐める行動が始まり、それが習慣化してしまっている場合もあります。原因が取り除かれた後も、反射的に舐め続けてしまうケースです。
執着行動を和らげる!具体的な対策と心のケア
愛犬が物を舐め続ける行動を改善するためには、その原因を見極め、多角的なアプローチが必要です。
- ストレス原因の特定と解消: まずは、愛犬が何にストレスを感じているのかを特定しましょう。
- 環境の見直し: 騒音が苦手な場合は静かな場所を用意する、留守番の時間を短くする、安心して休めるスペースを確保するなど、愛犬が落ち着ける環境を整えましょう。
- ルーティンの確立: 規則正しい散歩や食事の時間を設けることで、愛犬は生活に予測可能性を見出し、安心感を得られます。
- 分離不安対策: 留守番前に愛犬が十分に運動し、精神的に満たされるよう工夫しましょう。留守番中も安心できるクレートトレーニングや、飼い主の匂いがする衣類を置いてあげるなども有効です。
- 適切な運動と精神的刺激の確保: 運動不足や退屈が原因の場合は、愛犬のエネルギーレベルに合わせた適切な運動量を確保しましょう。散歩の時間を増やしたり、ドッグランで自由に走らせたりするのも良いでしょう。また、知育トイやノーズワーク(嗅覚を使った宝探しゲーム)など、頭を使う遊びを取り入れることで、精神的な満足感を与え、退屈からくる舐め行動を減らすことができます。
- 舐める対象の除去または対策: 愛犬が執着して舐める特定の物がある場合は、一時的にその物を遠ざけるか、舐められないようにカバーをかけるなどの物理的な対策を講じましょう。舐め防止スプレー(犬が嫌がる匂いのスプレー)を塗布するのも有効ですが、根本的な解決にはなりません。
- 注意の転換と代替行動の提案: 愛犬が舐め始めたら、叱るのではなく、注意を別のものに転換させましょう。
- 遊びに誘う: 大好きなおもちゃで遊びに誘う、引っ張りっこをするなど、別の行動に興味を向けさせます。
- 噛むおやつを与える: 長時間噛んでいられる、犬用の噛むおやつを与えることで、舐める以外の口を使った欲求を満たしてあげます。
- しつけの練習: 「おすわり」「伏せ」などのコマンドを出して、指示に従わせることで、冷静な状態に戻す練習をします。
- 身体的な原因の確認とケア: もし舐めている部位に皮膚の赤み、脱毛、ただれなどが見られる場合は、自己判断せずに、かかりつけの動物病院に相談してください。皮膚炎やアレルギー、関節痛など、隠れた身体的な問題がないかを確認し、適切な治療を受けることが最優先です。
- 飼い主の対応の見直し: 愛犬が舐めるたびに過剰に反応したり、叱ったりすると、それがかえって愛犬の注目を集めることになり、行動を強化してしまうことがあります。落ち着いて、一貫した対応を心がけましょう。
まとめ
愛犬の執着行動を理解し、心と体の健康をサポートしよう
愛犬が物を執拗に舐め続ける行動は、飼い主さんへのサインであり、ストレス、不安、退屈、または身体的な不調が隠されている可能性があります。単に「やめなさい」と叱るだけでは、根本的な解決には繋がりません。まずは、愛犬がなぜその行動をしているのか、その背景にある心理や身体的なサインを深く理解することが重要です。愛犬が安心できる環境を整え、適切な運動と精神的な刺激を与え、そして必要であれば専門家のアドバイスも求めながら、根気強く愛犬の心と体をサポートしていきましょう。愛犬の執着行動を理解し、適切に対処することで、より健康で穏やかな生活を取り戻し、飼い主と愛犬の絆はさらに深まるはずです。