公開日：2025年6月23日

【犬の予防接種の疑問解決】子犬のワクチンは必須？種類・費用・副反応から狂犬病まで徹底解説

医療

「子犬のワクチンって、何回打つの？」「毎年狂犬病の注射って必要？」「副反応が心配なんだけど…」と、愛犬を飼い始めたばかりの飼い主さんにとって、予防接種は多くの疑問や不安がつきまとうテーマかもしれません。しかし、ワクチン接種は、愛犬を命に関わる恐ろしい感染症から守るための、最も重要で効果的な手段です。正しい知識を持つことで、安心して愛犬に予防接種を受けさせ、健康な毎日を送ることができます。

この記事では、子犬の飼い主さん向けに、犬の予防接種の基本的な考え方、ワクチンの種類、接種スケジュール、費用、そして多くの飼い主さんが心配する副反応について、具体的な対処法まで詳しく解説します。さらに、法律で義務付けられている狂犬病予防接種についても触れ、愛犬を感染症の脅威から守るための知識と準備を提供します。愛犬と安心して社会生活を送るために、今日からできることを実践していきましょう。

なぜ犬に予防接種が必要？感染症から愛犬を守る重要な理由

犬の予防接種は、愛犬自身だけでなく、他の犬や、場合によっては人間をも感染症から守るために不可欠な医療行為です。

命に関わる感染症の予防

犬は、ワクチンで予防できる多くのウイルスや細菌によって引き起こされる感染症にさらされています。これらの病気の中には、感染力が非常に強く、発症すると致死率が高く、治療が困難なものも少なくありません。例えば、子犬の時に感染すると命を落とす危険性のある犬パルボウイルス感染症や、呼吸器・消化器・神経系に重篤な症状を引き起こす犬ジステンパーなどがあります。

ワクチンは、これらの病原体のごく一部を愛犬の体内にあらかじめ取り込ませることで、病気に対する「免疫」を事前に作らせる仕組みです。これにより、実際に病原体に遭遇した際に、体が速やかに対応し、感染を防いだり、たとえ感染しても症状を軽く抑えたりすることができます。

社会生活を送る上での責任と義務

狂犬病ワクチンは、日本では法律（狂犬病予防法）で年1回の接種が義務付けられています。狂犬病は人にも感染し、発症するとほぼ100%致死率の非常に恐ろしい病気です。この義務を果たすことは、愛犬の命を守るだけでなく、公衆衛生を守るための飼い主としての責任でもあります。

また、ドッグラン、ペットホテル、トリミングサロンなどの施設を利用する際には、混合ワクチン接種の証明書が求められることがほとんどです。これは、施設内で他の犬への感染を防ぎ、全ての犬が安全に利用できるようにするための重要なルールです。

犬の予防接種の種類と費用：混合ワクチンと狂犬病ワクチン

犬に接種される予防ワクチンは大きく分けて「混合ワクチン」と「狂犬病ワクチン」があります。

1. 混合ワクチン

複数の感染症をまとめて予防できるワクチンです。予防できる病気の数によって「5種混合」「7種混合」「8種混合」などと呼ばれます。

種類と対象疾患:
- コアワクチン（全ての犬に推奨）: 犬ジステンパー、犬パルボウイルス感染症、犬伝染性肝炎、犬アデノウイルス2型感染症、犬パラインフルエンザウイルス感染症など。これらの病気は感染力が強く、致死率も高いため、全ての犬に接種が推奨されます。
- ノンコアワクチン（必要に応じて推奨）: レプトスピラ症（人獣共通感染症）、犬インフルエンザウイルス感染症など。愛犬の生活環境（水辺での活動、他の犬との接触機会など）や地域のリスクによって、接種が検討されます。例えば、レプトスピラは野外活動が多い犬、ドッグランやペットホテルによく行く犬は犬インフルエンザの接種も検討されることがあります。
費用相場: ワクチンの種類や動物病院によって異なりますが、
- 5種混合: 5,000円〜8,000円程度
- 7種・8種混合: 7,000円〜10,000円程度
が目安です。

2. 狂犬病ワクチン

日本では、狂犬病予防法により、生後91日以上の飼い犬に年1回の接種が法律で義務付けられています。

目的: 狂犬病は、人にも感染し、発症するとほぼ100%致死率の非常に恐ろしい病気です。予防接種によって、愛犬自身と人間社会を狂犬病から守ります。
接種のタイミング: 生後91日以上の犬に、毎年1回、定期的に接種します。混合ワクチンとは接種時期をずらす必要があります（通常2週間以上間隔を空けます）。
費用相場: 自治体によって異なりますが、注射費用と登録手数料、済票交付手数料を合わせて3,000円〜5,000円程度が目安です。集合注射会場で接種すると、病院で個別に接種するより費用が抑えられる場合があります。

子犬のワクチン接種スケジュール：いつ、何回打つのが適切？

子犬のワクチン接種は、確実な免疫を獲得させるために複数回行うのが一般的です。以下のスケジュールが目安となります。

子犬期の複数回接種の理由

子犬は、母犬から母乳を通じて一時的な免疫（移行抗体）を受け継ぎます。この移行抗体は、子犬を病気から守る一方で、ワクチンが効果的に免疫を作るのを妨げてしまうことがあります。移行抗体の量は個体によって異なり、いつ消失するかは予測できないため、確実に免疫を作らせるために複数回接種が必要です。

一般的な接種スケジュール

生後6〜8週齢頃: 最初の混合ワクチン（1回目）を接種します。この時期はまだ移行抗体が高い場合もあります。
その3〜4週間後: 2回目の混合ワクチンを接種します。移行抗体が低下し始める時期に合わせて、免疫獲得を促します。
さらに3〜4週間後（生後12〜16週齢頃まで）: 3回目の混合ワクチンを接種することが推奨される場合があります。特に、感染リスクが高い環境にいる犬や、ブリーダーやペットショップでの環境によって免疫獲得が不十分な可能性がある犬には、3回目接種がより確実な免疫獲得につながります。
生後91日齢以降: 狂犬病ワクチンを接種します。これは法律で義務付けられています。混合ワクチンとは少なくとも2週間以上の間隔を空けて接種します。

注意点: 子犬のワクチン接種プログラムが完了し、安定した免疫がつくまでは、他の犬との接触を避け、不特定多数の犬が利用する場所（ドッグラン、ペットショップ、公園の犬の多いエリアなど）への外出は控えましょう。散歩は、自宅の庭や抱っこして行う程度に留めるのが安全です。

成犬期の追加接種（ブースター接種）

子犬期に獲得した免疫は永続的ではありません。そのため、免疫力を維持するために定期的な追加接種が必要です。

混合ワクチン: 一般的には、最後に接種してから1年後、または獣医師の判断で3年ごとの接種が推奨される場合もあります。愛犬のライフスタイル（他の犬との交流頻度、外出頻度など）や、獣医学の最新の知見に基づいて獣医師が判断します。
狂犬病ワクチン: 狂犬病予防法により、毎年1回の接種が義務付けられています。

ワクチン接種後の副反応（副作用）とその対処法

ワクチン接種は非常に安全な医療行為ですが、ごく稀に副反応（副作用）が起こることがあります。その症状と、万が一の際の対処法を知っておきましょう。

軽度で一時的な一般的な副反応

多くの犬に見られる、心配の少ない一時的な症状です。通常、接種後1〜2日程度で自然に治まります。

発熱: 体がだるそうにする、震えることがあります。
食欲不振、元気消失: いつもより食欲がない、遊びたがらない。
接種部位の腫れ・痛み: 注射した場所が少し腫れたり、触ると嫌がったり、しこりができたりすることがあります。
くしゃみ、鼻水: 鼻腔内投与のワクチンで起こることがあります。

これらの症状が見られた場合は、愛犬を安静にさせ、様子を見ましょう。心配な場合は動物病院に連絡してください。

命に関わる重篤な副反応（アナフィラキシーショックなど）

ごく稀ではありますが、命に関わる重篤なアレルギー反応（アナフィラキシーショック）が起こる可能性があります。接種後30分以内〜数時間以内に起こることが多いです。

顔の腫れ（特に目元、口元）、まぶたの腫れ、じんましん: アレルギー反応の初期兆候です。
激しい嘔吐、下痢: 急激な消化器症状。
呼吸困難、激しい咳、舌が紫色（チアノーゼ）: 気道が腫れて呼吸が苦しくなります。
ぐったりして動かない、意識がない、けいれん: 血圧低下によるショック症状です。
体温の低下: 血圧低下によるもの。

これらの症状が見られた場合は、一刻も早く動物病院に連絡し、指示を仰ぎ、すぐに病院に連れて行きましょう。多くの場合、接種を受けた動物病院で即座に処置が行われます。このため、ワクチン接種後は、しばらく病院の近くで様子を見るか、飼い主さんが愛犬の様子を注意深く観察できる時間帯に接種を受けることをお勧めします。

ワクチン接種を受ける前の準備と注意点

ワクチン接種の効果を最大限に引き出し、副反応のリスクを減らすために、以下の点に注意しましょう。

体調の良い日に接種する: ワクチンは体に免疫反応を起こさせるため、体調が悪い時に接種すると副反応が出やすくなったり、免疫が十分に作られなかったりすることがあります。発熱、食欲不振、下痢などの症状がある場合は、接種を延期しましょう。
問診時に伝えるべき情報: 獣医師に、愛犬の既往歴、アレルギーの有無、最近の体調、生活環境（他の犬との接触の有無など）を正確に伝えましょう。
接種後の安静: ワクチン接種後は、激しい運動やシャンプーを避け、安静にさせましょう。特に子犬は、免疫ができるまで他の犬との接触を避けることが重要です。
接種証明書の保管: ワクチン接種後は、接種証明書が発行されます。狂犬病ワクチンは鑑札と注射済票も発行されます。これらの書類は、ペットホテルやトリミングサロンを利用する際、狂犬病の登録時などに必要となるため、大切に保管しましょう。