【犬の腫瘍(しこり)ガイド】良性?悪性?愛犬の体にできものを見つけたらすべきこと

「愛犬の体を撫でていたら、なんかポコッとしたものがある…これって何?」「しこりを見つけたけど、良性なのか悪性なのか心配でたまらない…」と、愛犬の体に「しこり」や「できもの」を見つけた時、新米飼い主さんは大きな不安を感じることでしょう。特に、犬も人間と同じように高齢になるにつれて、様々な腫瘍(しゅよう)ができるリスクが高まります。
愛犬の体にできたしこりが、命に関わる悪性の腫瘍である可能性もあれば、治療の必要がない良性のものであることもあります。しかし、見た目だけでその区別をすることは非常に困難であり、間違った自己判断は、早期発見・早期治療の機会を逃してしまうことにつながりかねません。飼い主さんが冷静に対応し、適切な行動をとることが、愛犬の命を守るために非常に重要となります。
この記事では、愛犬を飼い始めたばかりの飼い主さん向けに、愛犬の体に「しこり」や「できもの」を見つけた際の、飼い主がすべき冷静な対応と観察ポイントを解説します。良性と悪性の違い(家庭での判断は困難であることも強調)、考えられる原因、動物病院での検査・診断、治療の選択肢、そして早期発見の重要性について詳しく紹介します。愛犬の健康と安心のために、今日からできることを実践していきましょう。
愛犬の体に「しこり」を見つけたらまずすべきこと
愛犬の体に異変を見つけたら、まず冷静になり、以下のポイントを確認しましょう。そして、速やかに動物病院を受診する準備をします。
1. 冷静に観察する
パニックにならず、まずは落ち着いて以下の点を観察し、記録しておきましょう。これらは動物病院での診察時に役立つ情報となります。
- いつ気づいたか: しこりに気づいたのはいつ頃か。
- 場所: 体のどの部分にあるか(例:首、脇の下、お腹、足、口の中など)。
- 大きさ: だいたいどのくらいの大きさか(例:米粒大、パチンコ玉大、ゴルフボール大など)。定規などで測っておくと良いでしょう。
- 形: 丸い、楕円形、不規則な形など。
- 硬さ: 柔らかい、ゴムのような弾力がある、硬いなど。
- 動き: 皮膚の下で動くか、皮膚と一体になって動かないか。
- 痛み、かゆみ: 愛犬が触られるのを嫌がるか、気にしている様子はないか。
- 表面の状態: 赤い、ただれている、毛が抜けているなど。
- 変化: 成長しているか、数が変化しているか(増えたか)。
2. 写真を撮る
しこりの大きさや見た目の変化を記録するために、写真を撮っておきましょう。特に、日付が記録される形で撮影すると、後の比較に役立ちます。
3. すぐに動物病院を受診する
しこりを見つけたら、良性か悪性かを自己判断することはできません。必ず動物病院を受診し、獣医師に診断してもらいましょう。早期発見・早期治療が、特に悪性腫瘍の場合には非常に重要です。
- 緊急性:
- 急激に大きくなっている。
- 愛犬が痛がっている、元気がなくなる、食欲がない。
- ただれている、出血している。
犬にできる「しこり」の主な種類と原因
犬にできる「しこり」や「できもの」には様々な種類があり、そのほとんどは腫瘍(良性または悪性)です。また、腫瘍以外のものもあります。
1. 良性腫瘍(治療の必要がない場合も多い)
- 脂肪腫(リポーマ):
- 最も一般的な良性腫瘍の一つ。脂肪細胞が増殖してできる、皮膚の下にできる柔らかく、プニプニとしたしこり。
- 触ると皮膚の下で動くことが多い。基本的には無害ですが、大きくなりすぎると生活に支障が出たり、他の腫瘍と区別するために切除が必要になることもあります。
- 皮脂腺腫(アデノーマ):
- 皮脂腺が過剰に増殖してできる、表面がブツブツしたり、カリフラワーのようになったりするしこり。
- 高齢犬に多く、顔や指、まぶたなどにできやすい。
- 乳頭腫(イボ):
- ウイルス感染や加齢によりできるイボ。特に高齢犬の体や足の裏、口の中にできることがあります。
- 組織球腫:
- 若齢犬に多く見られる良性腫瘍。比較的短期間で大きくなり、数ヶ月で自然に消えることが多い。
2. 悪性腫瘍(がん)
- 肥満細胞腫:
- 犬に最も多い悪性腫瘍の一つ。皮膚の下だけでなく、内臓にも発生することがある。
- 見た目や硬さは様々で、良性の脂肪腫と区別がつきにくいこともあるため、注意が必要。
- 触ると大きさが変化する(腫れたり、しぼんだりする)ことがあるのが特徴。
- 乳腺腫瘍:
- 特に未避妊の高齢のメス犬に多く発生。乳腺にできるしこりで、悪性の可能性が約50%。
- 発見したら早めに切除することが推奨されます。
- 扁平上皮癌:
- 皮膚、口の中、指の付け根、爪の付け根などにできる悪性腫瘍。
- 悪性リンパ腫:
- リンパ節が腫れる形で現れることが多い悪性腫瘍。体表のリンパ節(顎の下、脇の下、膝の裏など)が腫れてしこりのように触れることがあります。
- 線維肉腫:
- 皮下組織や筋肉に発生する悪性腫瘍。硬く、周りの組織に癒着していることが多い。
3. 腫瘍以外の「しこり」
- 嚢胞(のうほう):
- 液体や半固形の物質が詰まった袋状のもの。皮脂腺の詰まり(アテローマ)など。
- 膿瘍(のうよう):
- 細菌感染により膿が溜まったもの。触ると熱を持ち、痛みがあることが多い。
- 炎症や肉芽腫:
- 外傷や異物(草の種など)が皮膚の下に入り込み、炎症を起こしてしこりのようになることがあります。
動物病院での検査・診断と治療の選択肢
愛犬のしこりの診断と治療は、獣医師の専門的な判断が必要です。
1. 動物病院での検査
獣医師は、触診でしこりの状態を確認した後、いくつかの検査を提案します。
- 針吸引生検(FNA: Fine Needle Aspiration):
- 細い針をしこりに刺して細胞を採取し、顕微鏡で観察する検査。痛みは少なく、麻酔なしで行えることが多いです。
- 良性か悪性か、ある程度の判断が可能ですが、確定診断には至らないこともあります。
- 組織生検(バイオプシー):
- しこりの一部、または全体を切除して病理組織検査を行う検査。より正確な確定診断が可能です。
- 通常、鎮静や麻酔が必要となります。
- 画像診断:
- レントゲン、超音波検査、CT、MRIなどを用いて、しこりの内部構造や、体の他の部位への転移の有無を確認します。
- 特に、内臓に腫瘍がある場合や、転移が疑われる場合に有効です。
- 血液検査:
- 全身状態の評価や、他の病気の有無を確認するために行われます。
2. 治療の選択肢
診断結果に基づいて、獣医師が最適な治療法を提案します。治療法は、腫瘍の種類、悪性度、発生部位、進行度、愛犬の年齢や健康状態によって異なります。
- 外科的切除:
- 最も一般的な治療法。腫瘍を外科的に取り除く方法です。
- 良性腫瘍であれば切除で完治することが多いですが、悪性腫瘍の場合は、再発や転移を防ぐために広範囲に切除する必要がある場合もあります。
- 化学療法(抗がん剤治療):
- 手術で取りきれない悪性腫瘍や、転移のリスクが高い場合、全身に散らばったがん細胞を攻撃するために行われます。
- 放射線療法:
- 手術が困難な部位の腫瘍や、術後の再発予防、緩和ケアとして行われることがあります。
- 緩和ケア:
- 根治が難しい場合でも、愛犬の痛みや不快感を和らげ、生活の質を維持するための治療です。
- 経過観察:
- 良性腫瘍で、愛犬の生活に支障がない場合や、加齢によるものであれば、手術せずに定期的な経過観察となることもあります。
まとめ
愛犬の健康は、早期発見と適切な対応から
愛犬の体に「しこり」や「できもの」を見つけると、誰でも不安になるものです。しかし、大切なのは、慌てずに冷静に観察し、自己判断せずに速やかに動物病院を受診することです。
しこりの種類は多岐にわたり、良性であることもあれば、早期発見・早期治療が命を救う鍵となる悪性の腫瘍であることもあります。定期的なボディチェックを習慣にし、愛犬の体の変化に敏感になりましょう。そして、気になるしこりを見つけたら、信頼できる獣医師に相談し、適切な診断と治療を受けることが、愛犬の健康と幸せな生活を守るための最善の道です。