【犬の腎臓病予防・ケアの基本】多飲多尿は要注意!早期発見のポイントと食事・生活習慣でできること

「愛犬が最近、水を飲む量が増えた気がする…」「おしっこの回数や量が増えたけど、大丈夫かな?」と、愛犬の飲水量や排尿量の変化に気づいても、それが病気のサインだとはなかなか気づきにくい新米飼い主さんは少なくありません。しかし、これらの変化は、犬の腎臓病の初期症状である可能性があり、特に高齢犬では非常に注意が必要です。
腎臓病は、一度発症すると完治が難しく、進行性の病気です。しかし、早期に発見し、適切なケアを開始することで、病気の進行を遅らせ、愛犬の生活の質(QOL)を長く維持することが可能です。症状がはっきりと現れた時には、すでに病気が進行していることが多いため、飼い主さんが日頃から愛犬の小さな変化を見逃さないことが、愛犬の命を守る上で非常に重要となります。
この記事では、愛犬を飼い始めたばかりの飼い主さん向けに、犬の腎臓病のメカニズム、初期段階で現れるサイン(多飲多尿など)の見つけ方、そして早期発見・早期治療の重要性を解説します。腎臓の健康を保つための日々の食事の選び方(療法食の活用)、水分摂取の重要性、生活習慣の見直しなど、飼い主ができる具体的なケア方法について詳しく紹介します。愛犬と長く健康な毎日を送るために、今日からできることを実践していきましょう。
犬の腎臓病とは?なぜ危険なの?
犬の腎臓病は、腎臓の機能が徐々に低下していく病気です。腎臓は、体にとって非常に重要な役割を担っています。
1. 腎臓の働き
腎臓は、体内の「ろ過装置」のような働きをしています。
- 老廃物の排出: 血液中の老廃物(尿素窒素、クレアチニンなど)や毒素をろ過し、尿として体外に排出します。
- 体液バランスの調整: 体内の水分量や電解質(ナトリウム、カリウムなど)のバランスを保ちます。
- 血圧の調整: 血圧を調整するホルモンを分泌します。
- 造血作用の促進: 赤血球を作るホルモン(エリスロポエチン)を分泌し、貧血を防ぎます。
2. 腎臓病の種類と進行
- 急性腎臓病: 急激に腎機能が低下する病気です。中毒、感染症、脱水、尿路閉塞などが原因となります。適切な治療を行えば回復する可能性もありますが、重篤な場合は命に関わります。
- 慢性腎臓病: 最も一般的な腎臓病のタイプで、数ヶ月から数年かけて徐々に腎機能が低下していく進行性の病気です。高齢犬に多く見られますが、遺伝的な要因や他の病気(歯周病、心臓病など)が原因で若齢犬でも発症することがあります。一度破壊された腎臓の組織は元に戻らないため、完治は難しいですが、進行を遅らせるための治療とケアが重要です。
腎臓の機能は、約70%以上が失われるまで症状が現れにくいと言われています。そのため、症状が出た時にはすでに病気が進行しているケースが少なくありません。
腎臓病の早期発見が鍵!見逃してはいけないサイン
腎臓病は早期発見が非常に重要です。愛犬のわずかな変化に気づけるように、日頃から観察する習慣をつけましょう。
1. 初期に見られるサイン(見逃しやすいもの)
- 多飲多尿(水をたくさん飲み、おしっこの量が増える):
- 腎臓が老廃物を排出しきれなくなり、尿を薄めるために水分を多く必要とするため、水を飲む量が増えます。それに伴い、おしっこの量も増え、排尿回数も多くなることがあります。
- 夜中にトイレに起きるようになる、留守番中に粗相が増えるなどの変化に気づいたら注意が必要です。
- 元気がない、疲れやすい:
- 散歩や遊びの時間が短くなった、すぐに座り込むなど、活動量の低下が見られます。
- 食欲不振、好き嫌いが激しくなる:
- 食事を残すようになったり、今まで好きだったフードを食べなくなったりすることがあります。
2. 症状が進行した場合のサイン
これらの症状が現れた時は、腎臓病がかなり進行している可能性があります。すぐに動物病院を受診しましょう。
- 体重減少、痩せる:
- 食欲不振や老廃物の蓄積により、体重が減少します。
- 嘔吐、下痢:
- 体内に老廃物が溜まることで、胃腸の調子が悪くなります。
- 口臭がする(アンモニア臭):
- 腎臓が老廃物を排出しきれず、体内にアンモニアが溜まることで、独特の口臭がすることがあります。
- 貧血:
- 腎臓から分泌される造血ホルモンが減るため、貧血になります。歯茎の色が白っぽくなることがあります。
- 脱水症状:
- 皮膚の弾力がない、目がくぼむ、歯茎がべたつくなどの症状が見られます。
- 痙攣、意識障害:
- 老廃物が脳に影響を与えることで、神経症状が現れることがあります。
3. 定期的な健康診断の重要性
多飲多尿などの初期症状が見られなくても、特に7歳以上の高齢犬は、年に1〜2回の定期的な健康診断を受けることが非常に重要です。血液検査(BUN、クレアチニン、SDMAなど)や尿検査で、症状が出る前の初期段階の腎臓病を発見できる可能性があります。
愛犬の腎臓の健康を守るための食事・生活習慣
腎臓病と診断された場合、食事療法が治療の要となります。また、予防のためにも日々の生活習慣が大切です。
1. 食事管理(療法食の活用)
腎臓病の治療において、最も重要なのが食事療法です。
- 低タンパク質: タンパク質は消化されると老廃物となり、腎臓に負担をかけます。しかし、タンパク質は体の維持に必要な栄養素でもあるため、高品質で適切な量のタンパク質を与えることが重要です。
- 低リン: リンの摂りすぎは腎臓病を悪化させます。リン含有量の少ないフードを選びましょう。
- ナトリウム(塩分)の制限: ナトリウムの摂りすぎは血圧を上げ、腎臓に負担をかけるため、塩分控えめなフードを選びましょう。
- 適度なオメガ-3脂肪酸: 炎症を抑える効果が期待できます。
- 獣医師と相談して療法食を選ぶ: 腎臓病と診断されたら、必ず獣医師の指示に従い、腎臓病用の療法食に切り替えましょう。市販の一般食では、腎臓病に対応することは困難です。
- 新鮮な水を常に与える: 水分摂取は腎臓の働きを助け、脱水を防ぎます。複数の場所に水飲み場を置く、水をこまめに替える、加湿器を使うなど、愛犬がいつでも新鮮な水を飲める環境を整えましょう。
注意点:
- 急なフードの切り替えは避ける: 徐々に切り替えていきましょう。
- おやつは与えすぎない: 腎臓病用の療法食を与えている場合、人間用のおやつや一般食のおやつは、腎臓に負担をかける可能性があるため、獣医師に相談してから与えましょう。
2. 生活習慣の見直し
- 十分な水分摂取を促す:
- フードをふやかして水分量を増やす。
- ウェットフードを混ぜる。
- 飲水器の種類を変えてみる(循環式など)。
- 犬用ミルクや鶏の茹で汁(味付けなし)などを少量与える。
- ストレスを減らす:
- ストレスは病状を悪化させる可能性があります。愛犬がリラックスできる静かで安心できる環境を整えましょう。
- 適切な運動:
- 適度な運動は全身の健康維持に必要ですが、腎臓病の犬は疲れやすいことがあります。愛犬の体力に合わせて無理のない範囲で散歩や遊びを行いましょう。
- 定期的な尿検査・血液検査:
- 特に慢性腎臓病の犬は、定期的に動物病院で検査を受け、病気の進行度や投薬の効果を確認することが重要です。獣医師の指示に従い、定期的な通院を欠かさないようにしましょう。
- 飲水量と排尿量の記録:
- 日々の飲水量や排尿回数、量などを記録することで、わずかな変化にも気づきやすくなります。
まとめ
腎臓病は早期発見と適切なケアが愛犬の命を救う
犬の腎臓病は、症状が気づきにくいまま進行してしまう恐ろしい病気です。しかし、飼い主さんが日頃から愛犬の飲水量や排尿量、元気や食欲の変化に注意を払い、年に1〜2回の定期的な健康診断を欠かさないことで、症状が出る前の初期段階で病気を発見し、早期に適切なケアを開始することが可能になります。
腎臓病と診断されたら、獣医師の指示に従い、腎臓病用の療法食に切り替え、十分な水分摂取を促すことが何よりも重要です。愛犬と長く健康な毎日を過ごすために、この記事で紹介した予防とケアの基本をぜひ実践してみてください。愛犬のわずかな変化を見逃さないことが、彼らの健康と幸せを守るための鍵となるでしょう。