【犬の目の病気と治療法】白内障・緑内障・角膜炎…症状の見分け方と飼い主ができるサポート
「愛犬の目が白く濁ってきた気がする…」「目をしょぼしょぼさせているけど、病気かな？」と、愛犬の目の異変に気づいても、それがどのような病気なのか分からず、不安を感じる新米飼い主さんは少なくありません。犬の目は非常にデリケートな器官であり、目のトラブルは痛みや不快感を伴うだけでなく、放置すると視力低下や失明、さらには全身の病気につながることもあります。
一般的な目ヤニや充血といった軽い症状から、白内障や緑内障、角膜炎といった専門的な治療が必要な病気まで、犬の目の病気は多岐にわたります。病気によっては進行が非常に早く、手遅れになる前に適切な処置が必要な場合もあります。飼い主さんが目の病気のサインを正確に理解し、早期に動物病院を受診することが、愛犬の視力を守り、快適な毎日を維持するために不可欠です。
この記事では、愛犬を飼い始めたばかりの飼い主さん向けに、犬の代表的な目の病気（白内障、緑内障、進行性網膜萎縮症、角膜炎、チェリーアイなど）に焦点を当て、それぞれの症状、原因、治療法、そして病気と診断された愛犬のために飼い主ができる日常生活でのサポート方法を詳しく解説します。愛犬の目の健康を守り、より良い生活を送れるようサポートしていきましょう。
愛犬の目の病気：代表的な症状と見分け方
犬の目の病気は様々ですが、飼い主が自宅で気づける代表的なサインと、それぞれの病気に特徴的な症状を理解しましょう。
1. 目の異常を示す共通のサイン
以下の症状が見られたら、何らかの目のトラブルが起きている可能性があります。
- 目ヤニの量や色の変化: 普段より多い、黄色や緑色をしている、固まっている。
- 充血: 白目の部分が赤くなっている。
- 涙の量が多い、涙やけ: 涙があふれて目の周りが常に濡れている、涙で被毛が変色している。
- 目をしょぼしょぼさせる、目をこする: 痛みや不快感があるサイン。
- 光を眩しがる: 明るい場所を嫌がる、目に痛みがあるサイン。
- 目の濁り、色の変化: 黒目や瞳孔の色が変化している。
- まぶたの腫れ、できもの: まぶたが腫れている、いぼのようなものがある。
2. 代表的な目の病気とそれぞれの特徴
a. 白内障
- 病気の内容: 目の中のレンズである「水晶体」が白く濁り、光が網膜に届きにくくなることで視力が低下する病気です。人間と同じように、高齢犬に多く見られます。糖尿病が原因で発症することもあります。
- 症状:
- 瞳孔（黒目）が白く濁って見える。初期は分かりにくいことも。
- 視力が徐々に低下し、物にぶつかるようになる。特に薄暗い場所で顕著。
- 散歩を嫌がる、性格が変わるなどの行動の変化。
- 治療法: 基本的には外科手術で濁った水晶体を取り除き、人工レンズを挿入します。手術以外の内科治療は、進行を遅らせる目的で行われることがありますが、根本的な改善は難しいです。
b. 緑内障
- 病気の内容: 眼球内の圧力（眼圧）が異常に高くなることで、視神経が圧迫され、最終的に失明に至る病気です。非常に進行が早く、緊急性の高い病気です。
- 症状:
- 目の強い痛み: 目をしょぼしょぼさせる、目をこする、涙が増える。
- 目の充血: 白目が真っ赤になる。
- 瞳孔の散大: 黒目が開いたままになる。
- 目の濁り: 角膜が青白く濁って見える（水疱性角膜症）。
- 眼球の腫れ: 目の大きさが普段より大きくなる。
- 視力低下、物にぶつかる。
- 治療法: 内科治療（点眼薬、内服薬）で眼圧を下げることが基本ですが、進行が早い場合は外科手術（眼球摘出、レーザー治療など）が必要となることもあります。早期発見・早期治療が非常に重要です。
c. 進行性網膜萎縮症（PRA）
- 病気の内容: 網膜の細胞が徐々に変性・萎縮していく遺伝性の病気です。最終的に失明に至ります。
- 症状:
- 初期は夜盲症（暗い場所での視力低下）。夜の散歩を嫌がる、薄暗い場所で物にぶつかる。
- 病気が進行すると昼間でも視力が低下し、最終的に失明する。
- 症状がゆっくり進行するため、犬自身が慣れてしまい、飼い主が気づきにくいことがあります。
- 治療法: 現在、有効な治療法はありません。進行を遅らせるためのサプリメントなどが試されることもありますが、根本的な治療にはなりません。
d. 角膜炎・角膜潰瘍
- 病気の内容: 目の一番外側にある透明な膜「角膜」に炎症が起きる病気です。外傷（異物、毛、爪など）、細菌感染、ウイルス感染、ドライアイなどが原因となります。傷が深くなると「角膜潰瘍」となり、重症化すると角膜に穴が開いて失明に至ることもあります。
- 症状:
- 強い痛み: 目をしょぼしょぼさせる、目をこする。
- 涙が多い、目ヤニが出る。
- 目の充血。
- 角膜が白く濁る、または表面がデコボコしているように見える。
- 治療法: 点眼薬（抗生剤、抗炎症剤、ヒアルロン酸など）による内科治療が中心です。重度の場合は、外科手術が必要となることもあります。
e. チェリーアイ（第三眼瞼腺逸脱）
- 病気の内容: 目頭にある「第三眼瞼（瞬膜）」の裏側にある涙腺が、本来の位置から飛び出して、目の外に露出してしまう状態です。赤いサクランボのように見えるため、「チェリーアイ」と呼ばれます。
- 症状:
- 目頭から赤い塊（サクランボ状のもの）が飛び出している。
- 涙の量が増える、目ヤニが出る。
- 目を気にする仕草。
- 飛び出した涙腺が乾燥すると、炎症を起こしたり、ドライアイにつながったりすることもあります。
- 治療法: 基本的には外科手術で飛び出した涙腺を正しい位置に戻します。
愛犬の目の健康を守るために飼い主ができること
目の病気を予防し、早期に発見するためには、日頃の観察と適切なケア、そして定期的な動物病院の受診が不可欠です。
1. 毎日の目の観察とケア
- 目ヤニのチェックと拭き取り: 毎日のブラッシングの際に、目ヤニの量や色をチェックし、清潔なコットンや犬用の目のケアシートで優しく拭き取ってあげましょう。
- 目の周りの被毛のカット: 目の周りの毛が長い犬種は、毛が目に入って刺激にならないように、定期的にカットしてあげましょう。
- 清潔を保つ: 愛犬の寝床や顔を拭くタオルなども清潔に保ち、目に細菌が入るリスクを減らしましょう。
2. 定期的な健康診断と目のチェック
- 年に1回の健康診断: 症状が出ていなくても、年に1回は動物病院で全身の健康診断を受け、目の状態もチェックしてもらいましょう。特に高齢犬や目の病気になりやすい犬種は、より頻繁なチェックが必要です。
- 気になることがあればすぐに受診: 上記で挙げた目の病気のサインが見られたら、自己判断せずにすぐに動物病院を受診しましょう。緑内障など、緊急性の高い病気もあります。
3. 病気と診断された愛犬へのサポート
- 獣医師の指示に従う: 処方された点眼薬や内服薬は、獣医師の指示通りに、決められた量と回数で正確に与えましょう。
- 安全な環境づくり（特に視覚障害がある場合）:
- 家具の配置を頻繁に変えない。
- 危険なもの（尖ったもの、段差など）は取り除くか、保護する。
- 階段にはベビーゲートなどを設置して、転落を防ぐ。
- 散歩中はリードを短く持ち、周囲に注意を払う。
- 声をかけながら行動を促す。
- ストレスの軽減: 目の病気は愛犬にとって大きなストレスとなります。安心して過ごせる環境を整え、優しく寄り添ってあげましょう。
- 質の高いコミュニケーション: 視力が低下しても、嗅覚や聴覚、触覚は残っています。優しく声をかけたり、体を撫でたり、匂いを嗅がせる遊びを取り入れたりして、コミュニケーションを積極的にとりましょう。
まとめ
愛犬の目の健康を守り、豊かな生活をサポートしよう
愛犬の目は、彼らが世界を認識し、安全で快適な毎日を送るために不可欠なものです。白内障や緑内障、角膜炎など、犬の目の病気は多岐にわたり、中には進行が早く、早期発見・早期治療が求められるものも少なくありません。
飼い主さんが日頃から愛犬の目の状態を注意深く観察し、小さな変化を見逃さないことが、病気の早期発見と早期治療に直結します。気になるサインがあれば迷わずに動物病院を受診し、獣医師の指示に従い適切なケアを行ってください。愛犬の目の健康を守り、視力が低下しても快適な生活を送れるようにサポートしてあげることで、愛犬との絆はさらに深まり、共に歩む毎日がより豊かなものになるでしょう。
